『児童文学最終講義』
児童文学を読み漁っていたら体系的に学びたくなって、まずはこちらを読了。児童文学研究者・猪熊葉子教授の最終講義『子どもの文学と私』を収録および加筆した本書。講義形式なので読みやすく、面白くて一気読みした。詳細な注のおかげで、これから読みたい本が芋づる式に増えるし。以下、特に印象に残った箇所の覚書。
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・子どものための優れた歴史小説家ローズマリ・サトクリフ曰く、自分が子どものための作品と呼ばれるものを書くのは、自分の内部にあって「生きられなかった子ども時代を償うため」なのだ。
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・現実世界から物語の非現実世界への移行、そこから現実世界への帰還は、まさしくマジックとしか言えないものである。
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・子どもだけが感じる深い深い悲しみというようなものがあり、そういう感情を理解できる作家だけが子どものために物語を作ることができるのだ。
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・スザンヌ・ランガー曰く、芸術的なものの価値は生命感のリズムのあるなしである。
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・幸福の約束を様々な形で具体的に物語から与えられること、ハッピー・エンディングへの強烈な欲求を物語が充足してくれることが、私(少女の頃の猪熊先生)にとっての物語の存在意義だった。
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後半、猪熊先生の子ども時代のお話に、胸が痛んだ。両親の不仲、言葉の繭に閉じこもった母親からの『静かな暴力』。深く傷ついた自分を救済するため、のめり込んでいった児童文学。
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幼い頃に出会った物語の一節が、人生の道標になることがある。その一方、親の歪んだ幼稚性や心無く放った一言が、子どもを何十年も苦しめることがある。そのことを、肝に銘じたいと思った。
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そんなわけで、子育てにおいても学びの多い読書となりました。紹介されていた論文や書籍、難しそうなものもあるけれど、すべて読みたい。じっくりと読んでいこう。