『児童文学最終講義』

21:06 A+ a-


児童文学を読み漁っていたら体系的に学びたくなって、まずはこちらを読了。児童文学研究者・猪熊葉子教授の最終講義『子どもの文学と私』を収録および加筆した本書。講義形式なので読みやすく、面白くて一気読みした。詳細な注のおかげで、これから読みたい本が芋づる式に増えるし。以下、特に印象に残った箇所の覚書。
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・子どものための優れた歴史小説家ローズマリ・サトクリフ曰く、自分が子どものための作品と呼ばれるものを書くのは、自分の内部にあって「生きられなかった子ども時代を償うため」なのだ。
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・現実世界から物語の非現実世界への移行、そこから現実世界への帰還は、まさしくマジックとしか言えないものである。
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・子どもだけが感じる深い深い悲しみというようなものがあり、そういう感情を理解できる作家だけが子どものために物語を作ることができるのだ。
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・スザンヌ・ランガー曰く、芸術的なものの価値は生命感のリズムのあるなしである。
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・幸福の約束を様々な形で具体的に物語から与えられること、ハッピー・エンディングへの強烈な欲求を物語が充足してくれることが、私(少女の頃の猪熊先生)にとっての物語の存在意義だった。
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後半、猪熊先生の子ども時代のお話に、胸が痛んだ。両親の不仲、言葉の繭に閉じこもった母親からの『静かな暴力』。深く傷ついた自分を救済するため、のめり込んでいった児童文学。
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幼い頃に出会った物語の一節が、人生の道標になることがある。その一方、親の歪んだ幼稚性や心無く放った一言が、子どもを何十年も苦しめることがある。そのことを、肝に銘じたいと思った。
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そんなわけで、子育てにおいても学びの多い読書となりました。紹介されていた論文や書籍、難しそうなものもあるけれど、すべて読みたい。じっくりと読んでいこう。

児童書『泣くなツイ』

9:10 A+ a-


【児童書 No.3】
#泣くなツイ
#長谷川集平・作
#文研出版
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名作。30分で読み終わる短い物語。でも龍次の気持ちを想うと胸が熱くなって、涙がでた。
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しなやかな心の男の子、龍次。龍次はある日、一匹の子犬と出会った。子犬は首輪をつけていたけれど、なつっこい顔をして龍次のあとをついてきて、龍次から離れない。仕方なく、そのまま船場家で預かることになった。あとをついてきたから、ツイと名付けた。
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本当の飼い主が見つかるまで、ツイを預かろう。みつかったら、返すんだ。そうわかっていても、龍次は深くツイを愛した。賢くて可愛いツイ。でも、夜になると悲しそうな声で泣く。龍次はベッドのなかで祈るように呟く。「ツイ、泣くな。泣くなツイ。」
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心に染みわたる、素晴らしい物語だった。タイトルと作者に魅かれて読んでみてよかった。小学中級から読めそうな文章量と内容の親しみやすさ。犬を愛する人や、兄弟姉妹のいる方にもおすすめです。龍次と兄・勘太郎との絆の深まりも胸アツ。それにしても、清々しい読後感。手もとに置いておきたい一冊です。

児童書『長くつ下のピッピ』

21:33 A+ a-


【児童書 No.2】
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#長くつ下のピッピ
#子どものための世界名作文学シリーズ
#リンドグレーン 作
#須藤出穂 訳
#集英社
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子どもの頃から大好きな『長くつ下のピッピ』。作者のリンドグレーンが病気の愛娘のためにベッド越しに語り作った物語だと、今朝初めて知った。
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自由で大らか、そしてものすごく力持ち。どんな高い所へもひょいひょい登り、毎日をどこまでも楽しむ遊びの天才少女、ピッピ。他の人の目なんか気にせずに、自分を信じる力をもっている。優しくて正義感も強いピッピは、幼い子どもにとって、友達でありながらヒーロー。早く娘に元気に外を駆け回って欲しい。そんな思いで、リンドグレーンはこの物語をつくったのかな。
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岩波や偕成社から原作に忠実な翻訳本がでているし、見事な挿絵の絵本もありますが、今回は子どものための世界名作文学シリーズ版を。お話も原作からの抜粋型で、文章は幼い人がピッピに親しみを持てるよう工夫されています。ピッピと友だちになるための本、というところかな。サラッとしていて想像で補う余地のある挿絵も好き。そんなわけで、小学校低学年で本好きの子なら一人で楽しめそう。てか私が子どもの頃に読んだの、たぶんこれだ。
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それにしても、今回読み直して驚いた。ピッピって、9才だったのねー。すごいなー。火事のなか、子どもを助けるシーンとか、ピッピ節炸裂で格好いいし。さっき娘とも楽しみました♡子どもだけでなく、大人だって憧れちゃう女の子。ピッピを読むと心が弾む。大好き!

モザイク遊び『リモーザ』

6:57 A+ a-


1年ほど前に購入したデュシマ社のリモーザ。あまりハマらなかったので封印しておりました。最近、キーナーモザイクが楽しそうなので、そろそろかな?と、思って出したらビンゴ。母、心の中でガッツポーズ。完成品は、人形たちのお部屋の飾りにしたり、絨毯にしたり。
プチプチと、はめる感触も楽しいリモーザ。外すときは少し力がいるので、最初のうちは親が外してあげて、子どもはプチプチすることに専念できると楽しいかも♫

児童書『二分間の冒険』

6:54 A+ a-


【児童書 No.1】
読了した児童書の記録をはじめます。子どもと読むにはまだ早いかな、と思う本を一人で楽しみ、のたりのたりと投稿していきたいと思います。まず、一冊目。
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#二分間の冒険
#岡田淳 作
#太田大八 絵
#偕成社
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もったいない!小学生の頃にこの本と出会いたかった・・・!面白すぎ。ぐいぐい引き込まれた。著者の岡田さんは小学校の教師だったそう。こんな眼差しで子供たちの成長を見守る先生、素敵すぎる。
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時間は、たしかなものではない。正確に時を刻む時計の時間と、感覚でとらえる時間。この物語は、後者の時間のなかで繰り広げられる冒険譚。
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やんちゃ坊主の悟は、不可思議な『黒猫ダレカ』に、竜に支配された世界へといざなわれる。『ダレカ』はあるナゾをだした。
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『この世界で一番たしかなものとはなにか?』
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その確かなものをつかまえないと、もとの世界へ戻れないという。悟は答えを探しながら、冒険をはじめる。しかし成り行きで騎士になって、竜に戦いを挑む、まさかの展開。この物語、ファンタジーなのにファンタジーな気がしない。別の世界の話として楽しむのではなく、この物語の世界へと入り込んでしまう感覚。岡田さんの魔法か。これはほんと、冒険に憧れる子どもにとって、最高に魅力的な物語。
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最後、悟が仲間と一緒に導き出した答えは、大人にも響くものがある。いやむしろ、大人だからこそ一層響くのかな。勇気を、もらいました。